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日経新聞のスポーツ欄に面白いコラムがありました。
お正月は高校生のサッカー、ラクビー、バレーボールなどのチャンピオンが
誕生する時です。
そこで、勝ったチームの選手や活躍した選手が口を揃えて、
「気持ちで負けなかったから」とか「スパイク、(シュート)は気持ちで打ちました」と
言うとのことでした。

そして、記者たちも、「気持ちで」というすがすがしさこそ高校生らしいと、
記事の締めくくりに、「気持ちで勝てた」的な文章を持ってきます。
高校生のスポーツ記事は、「気持ち」のオンパレードとなります。
書くほうも読む方も、これで安心というワンパターンです。

このコラムによると、ある関西の高校チームの選手は、ベスト8入りしたあとの
インタビューで、一言も「気持ちで」とか、「気合で」という単語を
使用しなかったとのことでした。
「勝てたのはたまたま。実力では10回やっても1回も勝てないのでは」とか、
「相手のDFの足が遅いので、このDFなら1対1でぶっちぎれるなと思った」と。
まさに冷静な言葉だったそうです。

コラムの結論は、高校生のスポーツは汗と涙の青春ドラマでなければならないと
一方的に決めつけ、どうしても、最後は「気持ち」で文章を締めたくなりがち、本当に
「気持ち」だけで勝てるのだろうかということでした。

まさに世の中、「気持ち」の氾濫です。
オリンピックのレスリング選手が愛娘で「気合だ、気合だ、気合だ」と叫んでいました。
また、3.11の大震災以後は、「気持ちで負けるな」、「とにかく頑張ろう」、「繋ぐ気持ちが日本を救う」
「絆」。 気持ちがあれば何とかなるというようなムードです。
はるか昔の「神国ニッポンは、気力で戦争に勝つ」といった時代と同じです。

まさに、私たちの回りは、「気持ちで何とかなる」症候群の人達が、大きな声を出して走り回っている
のかもしれません。
精神力こそ一番大事、そして更にエスカレートして、精神力があれば試合に勝てる。
そして、最終的には、幸運は思えばやって来るとなります。

残念ながら、現実は厳しいものです。
「気持ち」だけでは試合に勝てませんし、「気持ち」だけでは復興もできません。
試合で勝つには、それだけの技術を身につけなければなりません。
より高度な実力を着実に身に付けていくことが唯一必要です。
震災後の復興や生活再建も、必要なのは「おカネ」です。
復興資金や仕事と給料が必要です。

筆者も「気持ち」は否定しません。
同じ実力者同士なら、最後は「気持ち」の勝負となります。
どちらが心の底から勝ちたいと思っていたかが明暗を分けるはずです。
もしかしたら、幸運はこの「気持ち」の強い方にやってくる可能性が高いかもしれません。
しかし、忘れてはならないのは、「実力が互角なら」という前提です。
ここを見ないで「気持ち」に頼るのは、あまり意味はありません。

実力をつける。これが第一歩です。
となると、スポーツでも仕事でも、勝つ目的を達成する第一要因は、
準備と作戦ということになります。
「気持ちで打った」のではなく、準備して、人の何倍もシュートの練習をしてきたから、
大事な場面でシュートを打ち、得点できたのです。
もしかしたら、相手の動きが遅かったので、フェイントで相手をだまし、そのスキを狙って
打てたからシュートが成功したにかもしれません。

仕事も同じです。
仕事で成功する。経済的な豊かさを手に入れる。事業を大成功させる。
転職、キャリアアップに成功する。いずれも「気持ち」だけでは得られません。
仕事を上手にやって成功するには、まず勝てる作戦を立て、そのための準備、
スキルのレベルアップなどをやりきらねばなりません。
何よりも大事なのは、「勝てる作戦」を作ることが出来るかです。
実力をつけるといっても、何でも出来るようになれるわけではありません。
せいぜい1つの事ぐらいが可能です。
その1つのこととは何なのか、それを見つけるのが「作戦」です。

新しい年です。何かを始めるチャンスです。
今年こそ、自分が達成したい事に日付けを入れませんか。
そして、その日付を具体的に実現するために、何をどう準備すればよいのか。
いつまでに、何をすれば良いのかと、途中の道のりにも日付を入れませんか。
そして、成果を得、目標を達成した後に、「気持ちで取り組みました。」
「気合で達成しました」と言ってみてはどうでしょうか。

「気持ち」や「気合」は、終った後の話です。
途中は、「気持ち」や「気合」より大切なのは、冷めた心です。
今、自分が一生懸命身につけようとしていることは、客観的に見て100点満点で
何点まできたのか。不足の分をカバーするのに、どのくらいの時間と費用が必要なのか。

そして、最後は、どんなことでも、ビジネスにかかわることは、「競争相手に勝つ」
必要があります。となると、相手の弱点は何なのか、そもそも競争相手は誰なのか。
このことを知らないで、勝てるわけはありません。
精神論は一番最後です。それまでは、冷静で冷めた考え方です。
「気持ち」だけでは目的を達成できません。

■バックナンバー

第1回 「仕事は楽しくて当たり前」

第2回 「頑張りますよ」とは絶対に言わない

第3回 「今日から始める」

第4回 「中流が減っていく時代です。所得上昇のエスカレーターはありません」

第5回 「向き、不向きは悩まない」

第6回 「特長」を「強み」と思っていませんか

第7回 幸運は準備した人のところにしか来ない

第8回 「就職氷河期」ムードに騙されない

第9回 「混乱ムードの時代です。本モノが求められます。」

第10回 「頑張ろう」の合唱より、「自分に力をつける」ことを

第11回 すべては「自分」のためです。

第12回 自分をブランディングしよう

第13回 当たり前の事を、当たり前にやっていく

第14回 総論の逆を行く

第15回 ドロ臭くて、格好も悪い

第16回 強みを何にするかを決めましょう

第17回 不正をするかしないかは、紙一重です

第18回 やっぱり“近道”は無いようです

第19回 「気持ち」だけでは勝てません

1947年  4月 東京都生まれ
1970年  3月 早稲田大学 政治経済学部卒
1970年  4月 ㈱ダイヤモンド社 入社
1996年  4月 ㈱ダイヤモンド社 代表取締役就任
2000年  4月 ㈱ダイヤモンド社 代表取締役会長就任
2000年 12月 ㈲ワイエスマネジメント設立

         現在、複数社の要職を兼任

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