今回は、あまり楽しくない話です。基本的には、問題点を指摘することを
生きがいとしたり、悲観論をふりまいて、「ほら、言ったとおりになっただろ」
と言うタイプでもありません。
これから飲もうというとき、アルコールが肝臓を痛めると最後はどうなるかという
ことを言うタイプです。ちっとも楽しくありません。
しかし、「最悪に備える」ことはいつも大事です。
最小限、人にこうしろと言う話しではありませんが、せめて自分と家族だけは
最悪に備えて少しでも手を打っておこうということぐらいはと思っています。
最悪とは、「アベノミックス」の副作用に直面することです。
日銀の尻をたたいて、無理矢理、おカネの流通量を増やして、インフレムードに
火をつけ、何でもいいから物価を上げさせる。
これが、安倍さんの基本です。
まずインフレということで株価がここぞとばかりに、ミニバブルに飛びつきました。
アッと言う間に、日経平均株価は20%以上も上昇しました。
安倍さんも市場関係者もご機嫌です。流通や自動車などの大手企業は
賃上げやボーナス増を打ち出し、一部の消費が復活した話にはずみを
つけようとしています。
株価が上昇し、土地も一部上昇し、給与所得も増え、個人消費が増え、
2%程度の物価上昇に持っていく。
すべり出しは順調と思っているようです。残念ながら、こんな美しい話が
やって来る確率は、一割以下だと思います。
株価が上昇しても、消費の大勢には結びつきません。今や、個人で株式を
持っている人は、国民の何%でしょうか。多くても10%ぐらいではないでしょうか。
持っている人にしても大半は老人です。TVニュースなどで株価が上がってどう思いますかと
聞かれて、「とても良いことです」と答えているのは、ほとんど年寄りです。
若い人がインタビューに答えている姿は、見たことがありません。
つまり、株価が上昇して恩恵を受けるのは、一部の老人たちということになります。
老人たちは、このおカネを何に使うか。今さら家を建てたり、クルマを買ったりは
しません。一番のパターンは、ビジネスクラスを利用した海外旅行ではないでしょうか。
世界の観光地に、60才以上、70才以上の日本老人があふれることになります。
となると、株価上昇の実際的な効果は限定的であり、なおかつ、国内の消費に
大きく寄与するとは思えません。次に、賃上げ、ベア、年収増です。
これも当たり前ですが、スタンドプレイに走った一部の大企業がベアを実施し、
円安で好調な決算をこの5月に発表せざるを得ない自動車などが、ボーナス増を
約束しました。「消費者は、2年連続で所得が伸びると、おカネを使い始める」というのが
セオリーです。気分は盛り上がりますが、1回目では、まだまだ実需要の大きな
うなりとはなりそうもありません。
安倍さんとしては、この夏の参議院選で何としても、参議院の安定多数を実現したい。
そのためには、出来るだけおカネをばらまき、リップサービスを連発して景気上昇
ムードを維持したいとなります。
そして、何よりも、その後の消費税を8%、10%へ上げる軌道に乗せることが大目標です。
実施の軌道に乗せてしまえば、財務省のスジ書きどうりです。
次は、15%の消費税を数年後に目指すという大作戦にとりかかれます。
最悪コースの始まりは、消費税の8%時代から始まります。
まず、所得が増えて、実需が増え、物価も適度に上がるといったコースは構造的に
あり得ません。企業で言えば、製造業はさらに苦境が続きます。円安で製造業が負けたの
ではなく、世界にいる1時間50円、100円でも働きたいという人が何億人いるという構造に対して、
勝てる戦略を打ち出せなかったから負けたのです。
もう遅いというのが世界の現実です。全体で考えれば、お金持ちの所得は伸びますが、
90%を占める中流以下の人達の収入は横ばいが精一杯です。
一方、物価は確実に上昇します。円安によって、石油や食品など輸入品は上がります。
もう始まりました。さらに、消費税の増税で、税負担後の所得は下がります。
一方、増税で物価は、2%以上上がります。
つまり安倍さんが言うように、所得も増えて、適度に物価が上がるなどというユートピアは
やって来るわけがないということになります。
不況だが物価は上がる。所得は下がっているのに、物価だけ上がる。もともと、消費税は
所得の低い人ほどダメージが大きいという税です。
所得の低い人にとっては、もう1~2年で、ほんとうにつらい時代がやってくることになります。
今よりは、何段階か困難さが増すことになります。
これが最悪コースです。確率的には90%以上です。
「そうならないように経済を運営していく」と言っていますが、すでに、この国や世界の経済は、
運営し、コントロールできる範囲を越えてしまいました。30年、40年前の経済理論では、
手も足も出ないのが今の現実です。
でどうするのか。出来るか出来ないかではありません。一つは「新しい生活」の構築です。
エネルギーの使用量や消費を少なくしても、「充実した生活」といえる型を各人が
作っていくしかありません。住む場所を変えることによって、小額の生活費でもやっていける
型をつくることです。仕事は、その生活を実現しやすい場所で選び、新しい職につく。
第一歩はここからです。10%以下の確率で安倍さんのバブルが軌道に乗るかもしれません。
しかしバブルはバブルです。短期間で終ります。やはり、最悪事態に対応していく一歩を
踏み出すことが、今、一番やるべきことこもしれません。
今までの思いや先入観や常識を一時棚上げするときです。
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1947年 4月 東京都生まれ |